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■ 移住者の声

農業(博さん)/事務職・革細工(温子さん)

山本博さん、温子さん

移住7年目の夫婦が伝える、田舎暮らしの本音

兵庫県出身の山本博さんと、大阪府出身の温子さん。2016年に家族で移住し、現在は二人のお子さんと猫二匹、犬一匹と一緒に生活している。移住後、元々設備屋として働いていた博さんは定住サポートを含む複数の仕事を経験し、温子さんは会社員として勤める傍ら革細工を手掛ける。ブランド名は「YOCCO(ヨッコ)」。趣味で始めた革細工だが、最近では古座川町の鹿革を活用した作品も制作し、イベント出店をするなど活動の幅を広げている。
家族や地域の方々との良い関係。のどかで安心できる暮らしの環境。田舎暮らしと聞いて想像するような生活もある一方、理想だけを描いていてはギャップを感じてしまう側面もある。古座川町での生活も7年目に突入した山本さんご夫妻に、田舎暮らしの本音を語っていただいた。

「お母さんも頑張るから一緒に引っ越してくれる?」
子どもの気持ちに寄り添い、子どもを中心に決めた住環境。

-移住はどちらから提案したのですか?

博さん:初めは僕から声をかけました。「田舎いいよな」という話を冗談みたいにしたら、「いいと思うよ」と言われたので候補地を探し始めた感じです。

温子さん:最初は四国を回ってたんです。なんとなく勝手なイメージで、移住イコール四国っていうのがあったんで。でも二人ともいいなと思うところがなくて、諦め半分で串本に遊びに来ました。そうしたら、たまたま古座川町に入った瞬間に「あ、なんかいいよね」ってお互いに感じて、すぐに移住することに決めました。

博さん:釣りが好きやったから串本にはよく来てたんですけど、古座川町はそれまで名前すら聞いたことがなくて。国道沿いに「古座川峡」っていう看板があるんです。渓谷なんやろうなと思って何気なく行ってみたら、思ったような川ではなかったんやけど、なんかいいなって。すぐに役場で移住の相談をして案内してもらいました。

温子さん:それが春頃で、7月に3泊4日の宿泊体験をさせてもらって、その年の12月に移住してきました。

-移住当時、お子さんはおいくつでしたか?

温子さん:下の子が年長で、上が小学二年生です。住む場所も小学校を中心に考えました。神戸の頃は一学年に140人くらいいたので、やっぱり児童数は全然違うんですけど、せめて一番多い学校の地区で家を探しました。

博さん:自分たち二人だけならもうちょっと田舎っぽいところのほうがいいかなって思ってたんやけど、学校から帰ってきたらもう子どもらが友達と会われへんような家と家の距離感やったんで、今のところに決めました。田舎に住みたいっていうのはあるけど、友達と遊ぶっていうのは大事にしてやりたかったから。

子どもの小さいうちはいいねんけど、大きくなってきたら自分の部屋が欲しいとかいろいろ出てくるんで、中庭があって自分たちの好きなこともできる広い家を借りれたのは、ラッキーやったんかなと思いますね。

-移住してきて、お子さんはすぐに馴染めましたか?

博さん:めっちゃ早く馴染んでました。川もこんなにきれいなんで、夏はもうキャッキャキャッキャいうてよく川遊びしていましたね。

温子さん:子どもたちのほうが馴染むのは早かったですね。Iターンなので、親も友達つくらないといけないじゃないですか。だから「お母さんも頑張るから一緒に引っ越してくれる?」みたいな感じで話をしましたね。

下の子はまだ小さ過ぎてあまりよくわかってなかったんですけど、上の子は神戸に仲のいい友だちがおったんで、その子とお別れせなあかんよっていう話は慎重にしました。結局今でもその友達とは繋がってて、一年に一回くらいは会ったりしてるんですけど、親としてその辺は気をつけましたね。




「野生動物のお肉だけでなく、革も有効活用できれば」
趣味から始まった革細工と、田舎だからできること。

-お二人のお仕事について教えてください。

博さん:今は農家さんのところで働いています。神戸では親父が設備屋をしとったから、20年くらいずっと一緒に設備の仕事をしてました。だからこっちに来て初めは設備屋さんで働いたんやけど、同じ建築業であっても場所が変わったら仕事内容もガラッと変わって。上手いこと合わせなあかんのやろうけど、なかなか合わなかったり、これっていう仕事に巡り合えなくて転々としていました。定住センターで働いたり、警備やったり、10トンのダンプ乗ったり、マグロさばきに行ったり。しょっちゅう顔合わすから、ハローワークの職員さんと仲良くなったもん(笑)。

まあでも、自分がこんなに仕事変わる人間ではないと思ってたし、会社が潰れてっていうんじゃなくて自分が続かないと思って変わるって、正直しんどかったですね。田舎暮らし合ってないんかなって。今だから笑って話せますけど。

温子さん:私はこっちに来てから3年間漁協で事務をして、今は串本で警備会社の事務をしながら副業で革のお仕事をしています。革細工はずっと趣味でやっていたんですけど、旅館のおかみさんが主催しているマルシェに誘われて、そこで出展したのが始まりです。最初はミニトートバッグとキーホルダー、ヘアゴムの3種類だけ並べて売ってました。それから年々少しずつ種類も増えていって、今は委託販売先も2、3か所あってという感じですね。

博さん:近所のスーパーとかで、「YOCCO」のロゴが入ったものを持った人が結構歩いとったりするんですよ。


-古座川町の鹿革を使ったものも制作していると聞きましたが、初めから仕事にしようと思っていたわけではなかったのですね。

温子さん:考えてなかったです。本当に趣味で自分や友達の鞄をつくる程度やったんですけど、役場の方がどこから聞いたのか興味を持ってくれて。

博さん:古座川町のジビエの解体施設で、(野生動物が)どうしても駆除されるんやったらせめて美味しいお肉として有効活用しようっていうふうにしている中で、革も有効活用して町として押し出していければいいですよね。ジビエも移住者がやってますし、革も移住者がっていうのは面白いんじゃないかなと思います。

温子さん:解体施設で取れた革をストックしておいて、まとめて和歌山市の事業者さんで鞣(なめ)してもらって、また送り届けてもらう流れになっています。鹿革は軽くてやわらかくて、手触りがいいんです。牛と違って、意外と湿気に強かったりとか。ふるさと納税の返礼品にも登録してもらっていて、今7種類くらい出しています。

-お仕事について今後の展望はありますか?

博さん:ここは工房として使ってるんですけど、明神地区で空き家を買って、そこをお店にしようと改装中です。いよいよ副業から一歩踏み出して、本業に近い形に持っていこうとはしてるんですけど、いかんせん休みの時に僕が一人で改装してるから、いつオープンになるかは未定です。

自分らのような動き方をしたい人って、たぶん世の中めっちゃおると思います。やっぱりこんだけ広いお家やから作業場もつくれるけど、都会で場所を借りてやったら採算合わへんやろうし、田舎やからできることかと思いますね。

住居の隣にある離れを改装した工房


「家は広くなってんねんけど、家族との会話は増えました」
いろいろあるけれど、家族や地域の人と関わり楽しく過ごす日々。

-移住する前と移住後では、どのような暮らしの変化がありましたか?

博さん:職場が近いから、都会に比べたら朝出るのもゆっくりですし、帰ってくるのも早いので家族と過ごす時間はだいぶ増えました。夜6時半か7時くらいには家族揃ってご飯食べて、団らんがあって、っていうのが当たり前にできてるような気がします。家は広くなってんねんけど、会話は増えてる。部屋は別々でも、同じ敷地内に居るっていうのは安心感があります。移住前も、どう生活するかより家族との時間が増えるかなと想像してたので、そういう面では思ってたことがある程度できてるかと思います。

温子さん:自然のなかで暮らしてみたいっていうのが、移住の一番初めの思いだったから、それは念願叶ってるかなと思います。未だにこう、星がすごく見える日は「今日きれいやな」って言いますしね。虫の声とか、鹿の声とか、いろんな声が聞こえるので、「鳴いてるね」って子どもと喋ったりもするし。そういうのはすごく、やっぱりこっちに来てよかったなと思います。


-移住して印象的だったことや、山本さんにとって重要だった出来事は何ですか?

博さん:互盟社(ごめいしゃ)っていう祭りの団体があるんですけど、そこに入ってからは地域の人たちと 知り合いになってすごく楽しくなりました。人付き合いの年齢層も一気に広がって、町を歩いてても声をかけれる人が増えたりして。祭りの行事なり、休みの日に動くこともあるんですけど、都会では絶対ないやろうなっていう関わりがあって楽しいですね。

コロナになって減りましたけど、それまでは週末とかに何かやるって言ったら、移住者も地元の人も混ざって20人くらい家に集まってわちゃわちゃしてました。

温子さん:古座川町の人たちも快く移住者を受け入れてくれてるから、私らもこうやっていられるんで。

夫婦での会話も多く、温子さんが聞き役になることが多いそう

-移住して7年ほど経ち、もうすっかり地域に溶け込んでいるのですね。

博さん:神戸の人って洒落たイメージがあるなかで、僕が神戸出身やって言ったら「お前が神戸なわけあるか。ずっとここで生まれ育ったやろ」っていう感じで言われたりするんです。その会話がいつものネタになってるみたいな。そうやって言われたら「あ、馴染めたんかな」って思えて嬉しいですね。

自分の父親くらいの年代の人から「今飲んでるから来い」って電話かかってきたりして、向こうはお酒飲んでるから大変なんやけど、そうやって誘われるのもありがたいのでほとんど毎回行ってます。

移住前に何を求めてたかって、ふわっとしてるから叶ったかどうかもあんまりわからへんねんけど、「6年経って楽しいですか?」って言われたら、毎日楽しいです。


-移住を検討している方に向けて、移住前に準備しておくといいことや心構えなどがあればお願いします。

温子さん:来る前に、どういう仕事があるかというリサーチは大事かなと思います。最近はパソコン一つあればできる仕事も多いけども、そうじゃない人もたくさんいるので。現実的にハローワークとかでどんな仕事があって、どれだけのお給料があるのかっていうのを見て、経済的な設計を組み立てて来たほうがいいかなと思います。子どもを2人、3人育てるとなると、たぶん共働きじゃなかったら厳しいと思いますね。

博さん:よく田舎暮らしの謳い文句で「家賃安いですよ」「生活費かからないですよ」とかがあるんですけど、その分やっぱり収入も下がります。子どもおったらある程度贅沢させてやりたいし、旅行もたまにはしたい。車も一人一台必要ですし、低賃金ではやっていけいないというのをわかって来ないと、ギャップを感じてしまうと思います。

移住を考えてる人で古民家暮らしを想像してる人も多いねんけど、テレビで映ってるような家はなかなかないですよ。300万円で買えるような家もたしかにあるけど、想像通りの古民家にするにはリフォームで1000万円はかかる。この家も6、7年かけてようやく今この状態っていう感じです。

じゃあ神戸に戻りたいかって言われたら、たまには恋しくなる時もありますけど、実際に正月とかに帰省したらすぐこっちに帰りたくなります。帰ってきたらホッとする。将来子どもらが出ていっても、僕ら二人はこっちにおるやろうなっていうくらい、こっちが好きやし後悔はしていません。移住するんやったら、みんなにそういうふうになってほしいので、理想だけじゃなくていろいろ現実を知った上で来てほしいですね。



【編集後記】

「元の生活を手放してせっかく移住してくるのであれば、田舎暮らしの理想を描くだけでなく現実を知って判断してほしい」。そんな思いから、古座川町での暮らしを飾らずに話してくださった博さんと温子さん。定住サポートの経験や、幅広い人間関係、移住後のご自身の実体験から、より一層これから移住してくる方々への思いを強くされたのでしょう。今移住を検討されている方、特にお子さんのいらっしゃるご家族のみなさまの参考にしていただければ幸いです。