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■ 移住者の声

古座川ジビエ 山の光工房 施設長/総合格闘家(リングネーム「ジャイアン貴裕」)

鈴木貴裕さん

ジビエと自然、人との縁に導かれ

古座川町月野瀬にある、シカとイノシシ専門の食肉処理加工施設「古座川ジビエ 山の光工房」。まちの住民をたびたび悩ませていた野生動物たちの農作物荒しを受けて、その対策だけでなく狩猟した動物たちの命を、感謝をもっておいしくいただけるようにと建てられた。ジビエとは野生鳥獣の狩猟肉のことをいい、日本では山間部の食文化として古くから存在していたが近年徐々に注目度が上がっている。工房では、国内最高レベルの食肉管理体制のもと、野生動物の解体から、ジビエの良さを存分に活かした商品の開発、製造、販売などを行う。
ここで施設長を務めるのが、古座川町の“ジャイアン”こと鈴木貴裕(すずきたかひろ)さん。総合格闘家という一面を持ち、鈴木さんならではの視点でジビエの魅力を伝える。平成29年に千葉県から移住し、来年小学生になる長女と令和元年生まれの長男、そして白浜町出身の奥さんとの4人暮らし。

「自分がやりたいことだったので、充実感があります」。
地域住民を困らせる野生動物のジビエ、独自の視点でプロモーション。

—現役の総合格闘家としても活動し、地域の人にはリングネームの“ジャイアン”と呼ばれ親しまれる鈴木さん。古座川町に来てから2年間ほど「和歌山県ふるさと定住センター」で移住の支援員として勤務し、その後、現在の「山の光工房」に就職しました。そんな鈴木さんですが、移住先を古座川町に決めた理由にはジビエや狩猟への興味があったそうですね?

鈴木さん:ジビエは他の肉と栄養価が全然違うんです。特に鹿肉は高たんぱく、低脂質で、脂肪の燃焼を助けるアミノ酸が豊富に含まれていて。そういう良いお肉だというのは以前からわかっていたので、身体づくりに良いよと宣伝したりしていたんですけど、実際自分が何かしているわけじゃないというか……自分の手で解体からお肉にしてプロモーションするところまでできた方が説得力も出るじゃないですか。今は狩猟免許も持ってるんで捕獲もできます。

—今の仕事をしていて、良いと思うことや大変な面はありますか?

鈴木さん:とにかく、ジビエに携われてるっていうのがまずひとつ充実感がある。自分がやりたいことだったので。あと、一緒に働いているメンバーがそれぞれしっかり能力のある人なんで、やってて面白いです。

一人がもともと古座川出身。ドイツで食肉マイスターの資格を取って、今年入社してからジビエを使ったソーセージを商品化したんです。オンラインショップでも販売していて、銀座のフレンチレストランの前菜とかにも使用されていたり、結構人気なんです。もう一人はTOEIC900点を誇るバイリンガルなんで、特殊なメンバーですね。

初めて止めさし(野生動物のとどめをさすこと)をした時はちょっと、ザワッとしました。でも、わるいところは特にないです。猟期に月100頭くらい入ってきて、めちゃくちゃいそがしいくらいですね。

—鈴木さんは格闘家としての経験をもとに、動物の解体だけでなく全国へ向けたジビエのプロモーションもしています。2019年に開発した新商品「BEAUT MEAT」とは何ですか?

鈴木さん:サラダチキンのジビエバージョンです。格闘技をしている人や、スポーツ選手に食べてもらいたいと思ったんですよね。健康志向の方も増えているので、身体づくりを気にする女性などにも。「これからは、トレーニングした後にジビエを食べる時代がくるぞ」っていうことで、機能性に特化したサラダジビエ「BEAUT MEAT」を商品化しました。

美容・健康をテーマとした企業、事業者が出展する「ダイエット&ビューティーフェア」っていうイベントがあるんですけど、その中でうちはジビエを健康や美容に良いよっていうことで出展しました。独自の道を行こうと。試食を用意し、リモートで参加したんですけど、フィットネスジム経営者の方やヨガトレーナーの方から好評でした。

「和歌山弁、にわかっぽくてちょっと恥ずかしいです(笑)」。
移住から3年、古座川町での暮らしを通して気がついたこと。

—ジビエのほかに、古座川町へ移住する決め手となったのはどんなことですか?

鈴木さん:この自然環境ですね。古座川はファンも多くて、シーズンになったら必ず来るという人もいるし。川と山と、面してはいないけど海も近い。それで、ないものはないままでいいと思うんですよね。よくこの町の紹介とかで、「駅もない、信号もない、コンビニもない」って常套句で言うじゃないですか。それはもうないままでいい。周りの町にあればいい。だから、串本町にさらに頑張ってもらいましょう(笑)。

—移住する際に心配なことはありませんでしたか?

鈴木さん:親には反対されました。当然だと思います。僕の実家が建設会社やってて、そこの跡継ぎだったんで。面と向かって話すだけでは全てを伝えることが難しいと思い、手紙を書いて、自分の思いを全て伝えて移住してきました。今では年に数回しか会えてないんですけど、以前よりお互いの理解は深まって、移住前より良好な関係を築けてるかなと思います。

移住する前は都内へ出るのもすぐのベッドタウンみたいなところに住んでたので、もっと不便かと思っていました。けど、いざ来たら意外と不便じゃない。通販でいくらでも買い物できるし、別になくてもいいものだったんだって。たまに大型スーパーとかショッピングモールに行くぐらいがちょうどいいですね(笑)。

—古座川町に来てから3年程が経つと思いますが、ご自身やご家族はどのように過ごしていますか?

鈴木さん:長女は2歳の時にこっちに来たので、今はもうネイティブな古座川チルドレンです。妻はもともと和歌山県の出身なんで、僕だけが標準語で喋ってますね。でもイントネーションが、和歌山弁ぽくなってしまう時があって、にわかっぽくてちょっと恥ずかしいです(笑)。自分の地元の人と話したときに、すっかり関西弁になってるなって言われるんですよ。

「結局、場所より人の方が大事な気がします」。
移住を経験し、多くの移住者とも関わってきた鈴木さんが考える、暮らしの選び方。

―古座川町での暮らしで困っていることなどはありますか?また、どうすればより住みやすい地域になるか、何か要望やアイディアがあれば教えてください。

鈴木さん:この辺はやっぱり川で遊ぶっていうのがメインのアクティビティなんですけど、遊具があって安心して子どもを遊ばせられる公園がほしいです。子育て世代の親御さんたちはみんな言ってますね。18歳までは医療費が無料だったり、保育園の保育料も給食費も無料。子育て支援策は町でいろいろやってくれてるんですけど、もっともっと教育、子育て環境の整備に力を入れて子育て世代に寄り添った町になってほしいですね。

子育て世代が安心して暮らしていける町は、お年寄りも安心して暮らしていける町なんですよ。外から来てもらうのももちろん必要だし、一度都会に出た地元の若者が帰って来やすいまちづくりにも力を入れたら良いんじゃないかなと思っています。

やっぱりIターンて難しいんですよね。誰でも上手くいくわけじゃないし、(受け入れる側の)地元の人にとっても不安があるので。Uターンの人は地元の人とも繋がりがあるし、Iターンの人とも共有できる部分があって、外から来た僕らみたいな移住者も暮らしやすくなる。潤滑剤というか地域が上手く回るための貴重な存在だと思います。

―Uターンも含めて、移住のハードルになるのはどんなことだと思いますか?

鈴木さん:どこの地方もそうでしょうけど、仕事がないわけではないけど都会より選択肢が少ない。環境は良くても、仕事の部分で躓くパターンが多いです。

移住のセミナーに行っても、起業した人や、お店やってる人、農業する人とかが多いんで、移住したらどうしても「何かしないといけないのかな」と思っちゃうんですよ。もちろん、できる人はそうしたらいいし、会社員の人でも通勤して働くこともできます。

―最後に、いま移住を検討している人に向けてのメッセージをお願いします!

鈴木さん:結局、場所より人の方が大事な気がします。場所が気に入っても、人と上手くいかなかったらそこに暮らしたいと思えないですよね。地域も環境もそうですけど、人とか仕事とか、縁が多い場所を選んだ方がいいかな。僕が移住するときに、定住センターで案内を受けたんですよ。そこで働いてた人が移住者で、地域にも結構馴染んでていろいろ紹介もしてくれたんで、わりと入りやすかったです。あと、夫婦や家族だったら奥さんが移住に前向きな方が上手くいきます(笑)。

どこの地方も環境や抱えている問題とか同じなんですよね。日本全国。その中で、何に惚れるかというか、なんでここにしたか。それは何かの縁があったからで、たとえば調べて最初に出てきたのがそこだから。それで行ってみたら気に入って住んだとか、そんな感じでいいと思うんですよね。あんまり地方に夢を見過ぎず、ありのままの町を知ってから移住する。あと慎重になり過ぎない。表裏一体ですけど、その二つが大事かなと思います。

【編集後記】

移住経験者として、また、移住者を受け入れる側としての両方の視点から丁寧に考え語ってくれた鈴木さん。お話の内容もさることながら、深い声の優しくゆったりとした口調も印象的でした。今この記事を読んでくださっているのも何かのご縁かもしれません。ぜひ一度、古座川町へお越しになってみてはいかがでしょうか?